高齢化に伴い、生活習慣病などの複数の疾患を合併した患者が増え、治療薬や症状を緩和するための処方が増加し、ポリファーマシーが問題となっている。併用する薬剤が増えれば増えるほど、薬物相互作用により有害事象の出現頻度も増加する。疾患ごとに別の医療機関で治療を受けている場合、医師は別の医療機関で処方されている薬剤を把握することは難しく、重複処方にさえ気づかないこともある。また、同一医療機関で治療を受けている場合にも、機械的にチェックがかからない限り、外来診療では見過ごしているケースも多いと考えられる。
このような状況の中でさらに精神科病棟での問題は、抗精神病薬やベンゾジアゼピン(BZ)系薬のポリファーマシーも散見される。BZ系薬剤は、抗不安、鎮静・催眠、筋弛緩といった作用をもち、すみやかな効果が期待でき、患者もその効果を実感しやすい。そのため、あらゆる診療科で処方されており重複処方も散見され、多剤併用に陥りやすい。BZ系薬のポリファーマシーの問題としては、過鎮静や持越し作用による作業能率や集中力の低下、特に高齢者では筋弛緩作用によるふらつきや転倒リスクの増大、認知機能の低下や健忘の発生、依存性などの有害事象があるが、多剤併用となった場合には、さらにそのリスクは高まる。特に依存が形成されてしまうと、減量・中止しにくい現状があり、診療報酬改定にて減算の対策がなされていても、改善されていない現状もある。
東京女子医科大学病院神経精神科病棟では、毎週1回全職種が参加しているカンファレンスをおこなっている。2013年からそのカンファレンスにおいて薬剤師から抗精神病薬とベンゾジアゼピン系薬に関してクロルプロマジン換算値とベンゾジアゼピン換算値を伝え、減量についての提案・検討を行っている。特にベンゾジアゼピン系薬剤に関しては減量の効果が上がっており、全職種が参加しているカンファレンスでの減量提案は、精神科のポリファーマシーを解決するために一つの方策だと考えられる。また、患者本人の誤った認識により減量が進まないケースもある。薬剤師から、パンフレットなど活用し患者自身にBZ系薬剤服用のメリットとデメリットを説明し、減量・中止を決心させることから始め、薬剤を減らす指導だけではなく、認知行動療法や心理的サポートと併用することで効果があるとされているため、全職種と連携してすすめている。