2014年に再生医療等製品の早期実用化を目指した薬機法改正がなされた。in vivo遺伝子治療用医薬品は本改正により、再生医療等製品の「遺伝子治療用製品」に分類され、遺伝子治療用製品の開発品目は増え国内で上市された品目も出てきている。引続き、遺伝子治療用製品の開発速度の向上を求められることは予想され、主に基礎研究に関わっているアカデミアにおいても、開発の正しい考え方を理解し実践していく必要があると考える。本発表では、下記のとおり、アカデミアでも求められる遺伝子治療用製品の開発段階(治験開始前まで)の必要な対応について、薬事等の特徴と留意すべきポイントを提示しつつ説明する。治験に用いる治験製品については、治験開始前までに求められる品質を確保する必要がある。国内では、ガイドラインとして「遺伝子治療用製品等の品質及び安全性の確保について」が発出されており、治験製品の規格、安定性、規格の試験方法、原材料、製法変更時に必要な同等性担保の考え方等が提示されている。また、治験製品の有効性、安全性について、非臨床試験により一定のエビデンスを得る必要がある。上記ガイドラインには、毒性、薬理、動態のエビデンスを得るために必要な非臨床試験デザインに関する考え方等が提示されている。治験デザインの検討の際には、安全性に関して、使用するウイルスベクターに起因する事象について特に考慮する必要がある。使用するウイルスベクター固有の有害事象がすでに公開されている場合は、当該有害事象をモニタリングする体制を構築すべきである。有効性に関しては、医薬品の治験と同様に臨床的意義のある評価項目を設定し評価すべきである。なお、国内では「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(カルタヘナ法)が施行されていることから、遺伝子組換えウイルスベクターを治験製品に使用する場合には、治験開始前までに第一種使用等(開放系での使用)に関する大臣承認を得る必要がある。国内で治験製品に使用する遺伝子組換えウイルスベクターを製造する場合には、製造開始前までに第二種使用等(閉鎖系での使用)に関する大臣確認を得る必要がある。これら品質、非臨床、臨床、カルタヘナ対応については、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が提供しているRS戦略相談、カルタヘナ法関連相談を利用して、治験開始前までにPMDAと見解の一致を得る必要がある。