医薬品等の開発において、Real World Data(RWD)の利活用を試みる国際的な動きが活発化している状況である。
本邦ではこれまで、希少疾病のように患者数等の限界から比較試験の実施が困難な医薬品等の開発において、非対照試験のデータと外部対照として観察研究から得られたデータを比較すること、臨床的に重大なイベントの発生を指標に非対照試験データと当該試験の参加施設で同選択基準を満たした試験治療未使用例のデータを比較することが、有効性及び安全性の評価として例外的に行われてきており、比較対象としてレジストリデータが用いられてきた。医薬品等の承認申請におけるRWDの更なる利活用が期待されており、この例外的な取組みを明示すること等により、医薬品等の臨床開発におけるレジストリデータの活用を行いやすくする取組みが進められてきた。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)ではこれまで、クリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)への対応として、レジストリに関する相談枠の設置及び実施、レジストリデータを承認申請等に活用するためのガイドライン作成に向けた組織横断的な活動を行ってきた。また、厚生労働省は、本年3月23日付けでPMDAがとりまとめた文書を「承認申請等におけるレジストリの活用に関する基本的考え方」及び「レジストリデータを承認申請等に利用する場合の信頼性担保のための留意点」に関する通知として発出した。
これらの通知が発出されたことで、医薬品等の承認申請等におけるレジストリデータの活用が推進されることが期待されている。一方、これらの通知に記載されているとおり、利用目的によってレジストリデータに求められる信頼性の水準は異なりうるため、利用目的に応じ個別に信頼性担保に必要な事項を検討する必要がある。そのため、レジストリを承認申請等に利用する場合にはPMDAに相談することが推奨されている。
PMDAでは、本年4月以降、事例を蓄積するとともに、新たに設置したRWD WGにおいて、RWDに関する課題を包括的に取り扱い、医薬品等のライフサイクルを通じたRWD活用に関する基本的考え方及び信頼性の担保に関する考え方の検討を行っている。
本演題では、上述の2通知の内容を踏まえ、主に医薬品等の承認申請・再審査申請においてレジストリデータを利用する場合の信頼性担保のための留意事項及びPMDAが行うRWDの信頼性に関する相談について、最新の状況も含めて説明する。