希少疾患等、従来のランダム化比較試験の実施が困難な領域において、医薬品および医療機器の開発・評価に対してReal World Data(以下、RWD)を利活用する取り組みが産官学で活発に行われるようになり、昨今、薬事承認申請や再審査申請等へのRWD活用に向けて、国および規制当局より複数の通知やガイダンスが出され、見解が提示されつつある。また、本邦における施策として、疾患レジストリデータを活用した効率的な治験や製造販売後調査及び臨床研究のインフラ構築を推進しようという、クリニカルイノベーションネットワーク構想が提示、複数の研究班が設置され、各国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)や学会等がそれぞれの疾患レジストリの構築を進めるとともに、そこから得られるデータを効率的な治験・臨床研究、市販後調査等に利活用するためのシステム構築、環境整備、ガイドライン策定等が行われた。
RWDの活用に際しては、規制、データの信頼性、倫理的な観点に加えて、科学的観点から生物統計学的な検討が必須であることが知られている。AMED医薬品等規制調和・評価研究事業「患者レジストリデータを活用した、臨床開発の効率化に係るレギュラトリーサイエンス研究」(2019年7月~2022年3月)【研究開発代表者:柴田大朗(国立研究開発法人 国立がん研究センター)】事業の分担課題【生物統計学的検討と他データベース 連携の検討】では、医薬品や医療機器等の開発においてRWD/Real World Evidence(RWE)を利活用する際の生物統計学的な観点からの留意事項について概観し、得られる臨床エビデンスを高めるためにRWD/RWEが利用可能な試験デザイン、留意すべきバイアスやその対処方法等について整理した。また、複数データベース間の連携の実現可能性等点ついて検討が進められた。本発表では、AMED柴田班の分担課題班で議論された内容の要約を報告する。