臨床研究は、どうやったら患者個々に確実な診断、適切な治療を施せるかという医療人の思いが原動力である。その目的は、臨床上の不確実性を調べることである。そのためには研究者のclinical questionをいかにresearch questionに落とし込み、実行可能で適切な試験デザイン、スケジュールを組むかが必要とされる。また、臨床薬理学では、薬の良し悪しを見極めるという命題があり、評価学の重要性も挙げられる。
1.いままで何がわかっていて何がわかっていないのか。まずここを整理することから始まる。何がわかっていないかが明確になると、研究の出口を見据えた研究計画を立てることが可能となる。そこでこれから行う研究の位置づけが定まることにより、観察研究、少数例の介入研究、あるいは検証的研究と大枠が見えてくる。
2.観察研究では後ろ向き、前向きの利点・欠点を考慮する。
3.どのような患者を対象とするのか(最も治療効果が出る、あるいはその治療を必要としているのはどのような背景を有した患者なのかをよく考える)。
4.介入研究:試験薬の用法・用量は適切であるのか、あるいはどのように設定するのか(日常診療における使い方でという大きな落とし穴)。
5.介入研究:対照は何を設定するのか。プラセボなのか標準治療なのか。その標準治療はコンセンサスが得られたものなのか(不確かなものを比較しても何も出てこない)。
6.介入研究:他に代替の治療法はあるのか。試験の継続性も考慮する。
7.介入研究:被験者の安全性は保障できるのか。倫理的に妥当であるのか。
8.主要評価項目は何を設定するか。最も知りたいことは何か。臨床転帰(死亡以外はその定義を明確にしておく)あるいは臨床転帰に関連する代替指標なのか。その評価法は薬の評価方法としてコンセンサスを得られているものなのか。その妥当性は検証されているのか。客観性をどう保証するのか。
9.副次評価項目は何を設定するか。なんでもみたいというのとは異なる。
10.介入研究:サンプルサイズは妥当なのか。
11.そして本当に対象患者を試験期間中に目標数までエントリーできるのか?各施設でどれくらい見込めるか。
実際に臨床研究を行うと数々の壁にぶち当たる。これまで行ってきた自験例を振り返り、上手くいかなかった点、反省点を挙げ、どのようにしたらより良い臨床研究が実施できるのか、みなさんと一緒に考える機会にしたい。