経口投与された錠剤やカプセルなどの固形製剤から薬物が吸収される際には,製剤が消化管内で崩壊し放出された薬物が消化管液中に溶解する必要がある。ほとんどの低分子医薬品の主たる吸収部位は小腸であり,小腸内で溶解状態を維持している薬物分子のみが小腸粘膜を透過し全身血中に移行することができる。製剤から消化管内での薬物の溶解プロセスは,製剤の処方や製法の影響を大きく受けることが知られている。さらに,食事の摂取により消化管内の環境(胃内pHの上昇,胃排泄時間の延長,消化管液の分泌亢進,胆汁濃度の上昇など)が劇的に変化すると,製剤や薬物の特性によっては溶解や膜透過過程に大きな影響があり,血中濃度が上昇する方向あるいは低下する方向の食事の影響を受ける。
医薬品開発の前臨床段階から申請までの様々なステージにおいて,製剤を投与した際の薬物吸収の予測は非常に重要な課題である。医薬品や治験薬の投与は絶食条件に限られる訳ではないことから,食後における薬物吸収の予測も不可欠である。食後における製剤の性能を定量的に予測するためには,上述した食事による消化管生理学の変化や食後の環境下における製剤の溶解挙動などを適切な数理モデルで表現しシミュレーションを行う必要がある。本シンポジウムでは,私たちの研究グループで開発してきたPhysiologically based Biopharmaceutics Modeling(PBBM)アプローチによる経口固形製剤の絶食および食後の薬物吸収予測の事例を紹介し参加者と議論する。