「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」が令和2年3月に一部改正され、生物学的同等性(BE)試験の評価方法に対する考え方に変更が加えられた。改正後のガイドラインでは、本試験の検証試験としての位置づけが明確にされ、厳格な第一種の過誤確率の制御が要求されている。BE試験における第一種の過誤とは、真にはBEではない製剤を誤ってBEであると判定してしまうことである。有意水準5%の二つの片側検定、もしくは、両側90%信頼区間に基づく単一のBEの評価では、この第一種の過誤の確率が5%(以下)となる。一方、この評価を複数回繰り返して、いずれか成功した結果に基づいてBEを判定するような場合には、この第一種の過誤確率は5%を超えるものとなってしまう(多重性の問題)。言い換えれば、真にBEではない製剤であっても、5%よりも大きい確率でBEが成立してしまうと言うことである。
改正後のガイドラインでは、従前は許容されていた予試験の結果を用いたBE評価を行うことはできない。また、例数追加試験を実施して本試験のデータと合わせて解析することも認められておらず、本試験のみでBEを評価しなければならない。その一方で、予試験の結果を含む事前情報の不確実性に対処するために、中間解析に基づくBE評価やその結果に基づくサンプルサイズの再計算を行うことが認められている。ただし、中間解析やサンプルサイズの再計算を行うことによって生じる第一種の過誤確率の増大に適切に対処し、その確率を5%(以下)に制御しなければならない。
本発表では、中間解析やサンプルサイズの再計算を計画に含むBE試験において、考慮しなければならない第一種の過誤確率の増大を引き起こす要因について説明し、その対処としていくつかの提案法を紹介する。また、実際にこのような試験を行う場合に検討しなければならない実施面での課題についても整理する。