私が治験に関わるようになったのは、当時勤務していた臨床検査会社で治験事業部に配属されたことがきっかけである。旧GCPが施行される前年、1989年のことだ。CROもSMOもない時代で、治験について勉強しようと思っても講師がいるわけでなく、テキストもなかった。というわけで予習なしのぶっつけ本番――毎日が実施研修のようなものだった。
 気がつくと治験にどっぶり浸かっていて、2001年にSMOを立ち上げた。当時はブロックバスターが目白押しで、雨後のタケノコのようにSMOが設立された。私が会社を作った頃、SMOは30社程度だったが、全盛期には200社ほどあったと記憶している。
早晩、治験バブルが弾けることは想像できたので、ある程度の企業規模がないと存続できないと考え、縁があってEPSグループに加わった。その後、CROの代表も努めたが、CRCのことが頭から離れることはなかった。CRCはわが国の治験の最大の功労者でキーマンであるはずなのに、その処遇・待遇はなかなか改善されず離職率も決して低くはない。CRCに長く働き続けてもらうためにどうすれば良いか、そろそろ関係者全員で考える時期に来ていると思う。
 CRCの頑張りなくして治験は語れない。そこで今回の講演では、CRCの話をメインに治験の歴史を振り返り、CROとSMO(=CRC)の現状を紹介し、治験業界の今後について、自社の取り組みを交えながら解説する。¶