【目的】IV期非小細胞肺癌患者でゲフィチニブ及びオシメルチニブのEGFR-TKIにて現在(2021年8月)迄91ヶ月服用を継続している症例を報告する。
【症例】60代男性Aさん、9年前左胸にIII期の肺癌が見つかり術後補助化学療法の治療歴があった。来局にてゲフィチニブ服用開始となったが、その後の聞き取りにより4週間毎4コースの化学療法で末梢神経障害と便秘が現れた事等からIIIA期(T2N2M0)でシスプラチンとビノレルビンによる術後補助化学療法と推察した。
服用3ヶ月後、他科受診後の来局にて「晩酌で肝機能の数値が少し上がった」と言われ検査値を確認したところ、ASTとALT軽度上昇でGrade1であった。Aさんにはお酒の影響だけではなく薬の副作用の可能性がある事と飲酒は控えて頂く事を伝え、医師にもその旨報告したところウルソデオキシコール酸300mg/日が追加となった。その後肝機能の悪化もなく現在迄服用は継続されている。
服用69ヶ月後「左鎖骨付近におできが出来たので皮膚科で診てもらう」と言われた。限局的な皮疹であったが副作用の可能性がある事を説明し早めの受診を勧め、医師にも報告した。後日来局時「おできの事を話したら再発の可能性もあると言われて3日後に検査入院になった。」と言われゲフィチニブの処方が中止となった。ゲフィチニブ中止2ヶ月後オシメルチニブに処方変更された事から検査入院にてEGFR T790M変異が確認されたものと考えた。
オシメルチニブ服用2ヶ月後からゲフィチニブには見られなかった皮膚乾燥と掻痒症が出現しGrade1であった。本人は季節的な事と気に留めておられなかったが、これも副作用の可能性がある事を説明し医師に保湿剤とステロイドの外用剤を処方提案したところヘパリン類似物質ローションとベタメタゾン軟膏が追加となった。そして4ヶ月後には症状も改善し支持療法も中止となった。
【結果・考察】IPASS試験EGFR陽性患者のゲフィチニブにおけるPFS中央値は9.5ヶ月に対しAさんは69ヶ月、AURA3試験日本人サブグループ解析でオシメルチニブのPFS中央値12.5ヶ月に対し現在迄22ヶ月である。この間Aさんは再就職したり毎日1万歩目標に歩いたりとPSも0を維持しつつ前向きに生活されながらEGFR-TKIとして現在迄91ヶ月長期服用されている。
【結論】これからも1日でも長く普段の生活を維持できる様に、有害事象を少しでも抑えられる様に、些細な事にも耳を傾けて患者に寄り添っていくつもりである。