【目的】パーキンソン病(PD)治療の中心はL-dopa製剤によるドパミン補充療法である。Levodopa(L-dopa)は生体内利用率が低く、半減期も短いため、L-dopa代謝酵素阻害剤を併用してより効率よく脳内へL-dopaを届ける工夫をする。2020年に末梢性COMT阻害薬としてOpicapone (OPC) が上市された。COMT阻害薬はL-dopaから3-O -methyldopa(3-OMD)への代謝を阻害することで、L-dopaのAUCが上昇し、代謝産物である3-OMDが低下することが期待される。しかし日本人のPD患者を対象としたOPC併用時のL-dopa薬物動態を検討した研究は少ない。そこで私たちはOPC併用時の合理的な処方設計を実施するために、L-dopa/DCI合剤にOPCを併用したときのL-dopa薬物動態の変化を検討した。【方法】当科入院中のPD患者5例(男性2例、女性3例)を対象とした。L-dopa/benserazide内服時のL-dopaとその代謝物の薬物動態を測定し、それぞれのAUCについてOPC 25mgを併用したときの薬物動態について検討した。L-dopaとその代謝物はHPLCを用いて測定した。【結果・考察】L-dopa/benserazide製剤を内服時にOPCを併用すると、L-dopaのAUCは1.3±0.3倍(mean±SD)に増加し、3-OMDのAUCは0.32±0.13倍に低下した。非日本人を対象とした薬物動態は、OPCを併用するとL-dopaのAUCは約1.5倍となることが示されているが、本研究ではL-dopaのAUCの増加率が既報告を下回る結果であった。COMT阻害剤へのresponderとnon-responderが混在している可能性があり、今後症例数を増やして検討する必要がある。【結論】日本人PD患者を対象としてL-dopa/benserazide製剤内服時にOPCを併用した際のL-dopaとその代謝物の薬物動態について検討した。OPC併用によりL-dopaのAUCは1.3倍に増加し、3-OMDは0.32倍に低下した。