【目的】パーキンソン病(PD)は患者数が増加している神経変性疾患であり、今後も高齢者人口の増加に伴いさらなる患者数の増加が予想される。新たな治療薬が上市されているが、治験の対象となる患者と実臨床において使用する患者との間には乖離がある。実際のPD患者に関する臨床的特徴について検討することは重要と考えられるが、本邦においてPD患者の疫学研究は十分には行われていない。本研究の目的は、愛媛県の地域中核病院におけるPD患者の臨床像について客観的に把握することである。【方法】2020年10月末の段階で済生会松山病院脳神経内科を定期受診しているPD患者を対象として、患者背景や治療内容に関して後方視的に検討した。【結果・考察】患者数は187名(男性83名、女性104名)、年齢は73.6±9.2歳(男性70.5±9.7歳、女性76.0±8.1歳)、罹病期間は8.9±5.9年であった。罹病期間が長くなるほどPDの重症度の指標であるHoehn&Yahr(HY)stageは上昇し(r=0.52、p<0.01)、また抗PD薬の薬剤数も増加した(r=0.42、p<0.01)。これは、病状の進行に伴い、処方数が多くなり複雑化しているものと考えられる。本研究では抗PD薬のみの集計であり、実際の内服錠数に関しては検討できていない。しかし、高齢の患者では、PD以外の疾患の合併に伴い多剤服用している場合が多く、服薬アドヒアランスを考慮し可能な限り最小限の服薬数で治療を行うことが望ましいと考えられる。一方、Lードパ換算用量(LEDD)は罹病期間とともに増加するが(r=0.42、p<0.01)、20年を超えると減少する傾向にあった。HY stageとLEDDの間には正の相関がみられたが、HY5はHY4よりLEDDは低値であった(p=0.01)。これは、HY stageが増加するにつれて必要な内服量が増加していくものの、活動量が低下するHY5 では必要量が減少した可能性、またはL-ドパ誘発性ジスキネジアや幻覚などの薬剤による副作用のため減量せざるを得えなかった可能性などが考えられる。【結論】本研究により、愛媛県の地域中核病院におけるPD患者の臨床像の一端を把握しえた。今後もさらなる検討が必要である。