【目的】固形がん患者におけるデノスマブ投与時の腎機能と低カルシウム血症の関連性を明らかにすること。
【方法】2017年4月から2019年3月に固形がん骨転移による骨病変に対してデノスマブを新規に投与した患者を対象とし、患者背景および臨床検査値、併用薬について診療録調査を行った。対象をクレアチニンクリアランス(Ccr)を用いて4群に分類した。低Ca血症はCTCAEv5.0を用いて評価した。腎機能別の低Ca血症発現率および血清Ca値変化率についてχ2検定およびF検定を用いて検討した。また、低Ca血症予防薬投与の有無による血清Ca値変化率についてT検定を用いて検討した。
【結果】解析対象は590例であった(年齢68±12歳、男性321例)。腎機能分類は正常(Ccr≧80)176例、 軽度腎障害(50≦Ccr<80)252例、中等度腎障害(30≦Ccr<50)127例、 重度腎障害(Ccr<30)35例であった。低Ca血症予防薬は94%で併用されていた。腎機能分類ごとの低Ca血症発現率(%)は正常群32.4%、軽度腎障害群39.3%、中等度腎障害群31.5%、重度腎障害群62.9%であり、正常群と比較して重度腎障害群で有意に発症率が高かった(p =0.001)。腎機能分類ごとの血清Ca値変化率(%)は正常群-5.5±7.1%、軽度腎障害群-7.2±8.5%(p =0.013)、中等度腎障害群 -9.5±10.8%(p<0.001)、重度腎障害群 -19.9±14.8% (p<0.001)であり、正常群と比較して各群ともに有意に低下を認めた。低Ca血症予防薬の投与がない場合、血清Ca値の変化率は腎機能分類に関わらず予防薬投与群より大きくなり、特に中等度で有意であった(p =0.009)。
【結論】軽度および中等度腎障害患者では血清Ca値は低下するものの、有害事象と判断される低Ca血症の発症頻度は腎機能正常患者と差が認められなかった。一方、重度腎障害患者においては、有害事象と判断すべき低Ca血症の発症率が高かった。腎機能によらずデノスマブの投与時には血清Ca値をモニタリングすべきであり、特に重度腎障害患者においては高率に低Ca血症を発症することを念頭に置くべきである。また、低Ca血症予防薬の有無による血清Ca値の変化率の差は、サンプル数が少なく有意差は中等度でのみしかみられなかったが、腎機能障害が重度になるほど差が広がる傾向がみられた。デノスマブ導入前に高Ca血症のため予防薬を併用していない症例であっても、頻回なモニタリングを実施し併用を検討する余地がある。