【背景】新型コロナウイルス感染拡大に伴い、「マスク着用」「手洗い」「口腔ケア」などの衛生習慣が日常となった。特にマスク着用は飛沫感染や接触感染の予防に大変有効な手段であり、一日の大半をマスクとともに過ごす生活が当面は続くと考えられる。
一方で、長時間のマスク着用による負の影響も明らかになりつつある。例えば、マスク着用下では無意識に口が開き、口呼吸となりがちである。そのため、口腔内の乾燥や唾液分泌量の減少、口腔内細菌叢の変化が生じる。また、長期のマスク着用により口まわりの筋肉を動かす機会が減ったことで、咀嚼力の低下が心配される。このように、マスク着用は口腔衛生環境や口腔機能に深刻な影響をもたらすものと考えられるが、深く追求した報告はない。
口腔衛生環境改善に着目したアロマ成分複合体DOMAC(ドゥーマック)は、デカン酸や低分子化ライチ由来ポリフェノール、シナモンパウダー、シトラール、サケ由来プロタミン分解物など複数の機能性成分を含む食品原料である。In vitroの系においてCandida albicansの菌糸形発育抑制効果や微生物に対する抗菌効果が報告されている。また、DOMAC含有食品の摂取は口臭や口腔内総菌数、舌苔付着程度の低減効果を示すことが分かっており、マスク着用による口腔衛生環境への悪影響を抑える効果が期待される。
【目的】マスク着用時と非着用時の口腔衛生環境を比較するとともに、マスク着用時にDOMAC含有食品の摂取することで口腔衛生環境にどのような影響をもたらすか検討した。
【方法】健常成人を対象に2つの試験を実施した。試験1:指定の不織布マスクを2時間着用し、マスク着用前後の口臭、口腔内総菌数、口腔湿潤度を測定した。試験2:測定の7日前から測定当日までの計8日間、DOMAC含有タブレットを1日1粒摂取した。測定当日は試験1と同様の方法で試験を進めた。
【結論】本研究は継続してデータ取得を進めており、2021年12月までにすべてのデータが出そろう予定である。本発表では、マスク着用による口腔衛生環境への影響を明らかにするとともに、その影響を抑える手段としてのDOMAC含有食品の可能性について議論したい。