【目的】高血圧およびそれに伴う腎臓病の発症・進展には酸化ストレスが関与することが知られている。これまで我々は酸化ストレスによって惹起されるvanin-1が高血圧モデル動物において腎障害進展と関連することを明らかにしてきた。本研究では、高血圧患者において尿中vanin-1が腎機能低下の予測因子になるか否かについて検討した。【方法】長野県飯田市の健和会病院を受診した成人高血圧患者を対象とし、同意取得後、日常診療時に採取した随時尿からvanin-1を測定した。vanin-1と追跡期間におけるeGFR20%以上低下との関連を各種因子(年齢、性別、降圧療法、喫煙の有無、肥満)で補正したCox比例ハザードモデルにより解析した。【結果・考察】解析対象者は随時尿または追跡期eGFR値が得られなかった患者を除外した147例(年齢72.9±8.2歳、女性39%)であり、平均12.5ヶ月の観察期間中にeGFR値が20%以上低下した症例は14例であった。vanin-1中央値(0.33 ng/mg Cr)で2群に分けたKaplan-Meier曲線では 0.33 ng/mg Cr 以上の患者群は、0.33 ng/mg Cr 未満の患者群と比較して有意にeGFR値が低下した。さらに各種因子で補正した多変量Cox比例ハザード解析の結果、尿中vanin-1はeGFR低下の独立した予測因子であった。【結論】高血圧患者における尿中vanin-1濃度は腎機能低下を予測する上で、その測定が有用であることが示唆された。