【目的】
 令和3年3月23日告示の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(以下、生命・医学系倫理指針)が6月30日に施行されたことに伴い、従来の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(以下、旧ゲノム倫理指針)は廃止されたが、東京大学大学院 医学系研究科・医学部(以下、当施設)では、旧ゲノム倫理指針で規定されていた個人情報管理者の役割を担う組織として設置した、個人識別情報匿名化室(以下、匿名化室)を、存続させて運用している。
 旧ゲノム倫理指針下では、第三者として匿名化室がヒトゲノム解析研究における個人情報匿名化を行っていた。生命・医学系倫理指針施行後、研究者自らが行う場合についても、当施設の倫理審査申請時には匿名化に関する手順書の添付が必要とされている。
 単施設研究、多施設共同研究、難病プラットフォーム研究、グローバル研究などの様々な実施体制があるなかで、臨床研究実施の初心者でも取り組みやすいように手順書作成の手引きを作成し、基本的プロセスを標準化することにより、研究者の手続きならびに審査者の負担を軽減するとともに、適切な匿名化手順の品質を維持する一助としたので、報告する。
【方法】
 1. 研究者自らが匿名化を行う場合の必要事項と注意点を、研究実施の流れに沿って整理した。
 2. 個人情報を安全に管理するために、どの役割の者が、何を、どの場所で行うのかを含め、基本的な手続きを挙げて標準化した。
 3. 研究計画書に規定された文言を引用することで、それぞれの実施体制を反映した手順書が作成できるテンプレートとした。
 4. 研究終了時には、個人情報の保管期間や廃棄方法を、匿名化室と研究者が双方で確認できるような流れを組み込んだ。
 5. 生命・医学系倫理指針を遵守するうえで重要な事項は、チェックリストを作成し、研究者と匿名化室の双方で確認が容易となるように整理した。
【結果・考察】
 個人情報匿名化手順のプロセスを標準化し、手順書のテンプレートと手引きを整備できた。これらは研究者支援、倫理申請時の支援、そして研究支援者業務の品質を維持する一助となった。定期的に見直しをはかり、より適切な匿名化の体制づくりに寄与していきたい。
【結論】
 ゲノム研究における個人情報匿名化手順に標準化を取り入れてプロセス管理し、様々な実施体制においても品質を維持しつつ、取り組みやすい体制を構築した。