【目的】2020年4月早期臨床試験に特化した臨床試験専用病棟(次世代医療・iPS細胞治療研究センター、略称 Ki-CONNECT)が開設された。同時期に、新型コロナウィルス感染症(以下、「COVID-19」)の蔓延により、医療崩壊が囁かれる中、当病棟での臨床試験も甚大なる影響を及ぼした。このような中で、健常人試験、有疾患試験を並行して実施するにあたり、多職種との連携において実施した状況を報告し、今後の課題及び、当病棟の有用性を明確にすることを目的とする。【方法】2020年4月から全30床のうち15床の病床を開き、COVID-19が蔓延する中で臨床試験を受け入れてきた。COVID-19感染対策防止指針について、本院、感染制御部(以下、「ICT」)を中心に、マニュアルが整備された。その指針を基盤に、被験者及びスタッフの安全確保・試験の質の担保ができるように、早期より実務者である医師、看護師を中心として、臨床検査技師、薬剤師、CRC、事務で課題の抽出を行い、ICTと連携を図り実施体制の構築を行った。【結果・考察】COVID-19パンデミック下において、下記の通り対応した。1.早期から臨床試験プロトコールに関わり、ICTと連携しトリアージ、場面ごとに感染対策フローを作成し他職種と情報を共有し手順を整えた。2.臨床試験プロトコールに沿って、実務者で業務調整を行い、試験実施のフローの作成、シミュレーションを実施した。3.入院時全例PCR検査を行い、原則個室対応とし、被験者間の接触を最小限に留め、感染対策を講じながら試験を遂行した。4.臨床試験専用病棟に関わるスタッフ、被験者にCOVID-19の発症はなく、安全確保・試験の質の担保ができた。早期から試験プロトコールに関わり、病棟関連実務者及びICTと連携を行う事で、健常人試験・有疾患試験を並行しながら、試験を中断することなく、被験者とスタッフの安全確保をしつつ、スムーズに試験を遂行することができたと考える。また、実務者として部門を越えて連携し協働することが、試験の質の担保へと繋がると考える。【結論】2021年4月にはさらに15床を開設し全30床となった。今後、がん、難治性疾患、希少疾患に対する新規治療薬やiPS細胞治療の早期臨床試験を実施できる施設として、病棟の体制基盤を強固なものとし、人材育成にも取り組んでいきたい。