【目的】 リスクに基づくモニタリング(Risk-Based Monitoring:RBM)という考え方は、2011年8月にFDAとEMAにより相次ぎ発表されたガイダンス案が始まりであった。過去のモニタリングに関する認識としては問題が発生した後の是正措置が中心で、問題を予測し、予防する作業過程を構築するプロセス管理が不十分であった。2016年(ICH-E6改訂による)RBMの本格運用を機に、当院では同意プロセスについて記録の取り方や同意書の版数の管理について検討を始め今年で5年目となる。 昨今のCOVID-19感染拡大によるSDV訪問禁止や訪問制限が続いていることを踏まえると、医療機関側の「質」を担保できるプロセスを管理することは非常に重要である。そこで、更なる品質向上を目指し、当院での同意プロセスについて再検証を行った。【方法】同意取得に関するワークシートは「治験開始時・本人」「治験開始時・代諾者」「再同意」の3種類と、課題毎に同意説明文書の版数と被験者番号を一覧にした「同意文書管理リスト」の計4種を作成している。今回は、「治験開始時・本人」と 「再同意」の書式とプロセスについて1~3の手順で検証を行った。1 第1版から最新版までの作成に関して検討した事項を抽出 2 最新版において発生しやすい又は実際に発生したプロセス不遵守について調査3 次回改訂に向けての検討【結果】治験開始時の同意取得では、IRBで条件付き承認となる場合があり、結果通知書の指示決定日が予定日と異なったため治験締結日を間違えやすいことが分かった。再同意では、文書改訂ではなくレター発行に伴って必要となる口頭同意においてワークシートの記載が不十分となった事例があった。【考察】ICF改訂による再同意以外にもレターを用いての同意という通常とは異なる場合においてもプロセスに沿った同意取得が必要だと分かった。プロセスの内容を検討することで適切な同意取得ができ、問題を未然に防ぐことができるようになることが分かった。今回の同意プロセスの検討を他の治験プロセスの検討にも広げ、GCP、プロトコールに沿った質の高い治験を実施できる施設を目指して努力をしていきたい。