【目的】当院では2016年度に「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に基づく研究機関の長が自ら行う点検(以下、自己点検)の実施体制を構築し、臨床研究推進室室員が点検者として指名を受け、2回/年の自己点検を継続している。また2019年度から「臨床研究法」に基づく点検の体制も追加した。自己点検の導入から5年経過し、2020年度までに40課題の自己点検を終了した。自己点検を5年実施した結果から有用性を検討する。
【方法】2016年度から2020年度に実施した自己点検の結果報告書から不適合項目数、不適合の内容と改善策を確認し、自己点検活動が指針等の遵守に有用であるか検討する。
【結果・考察】自己点検は、22診療科32課題、5部門8課題に対して実施した。研究内容は、介入・侵襲あり8課題、介入あり4課題、侵襲あり9課題、介入・侵襲なし15課題、特定臨床研究4課題であった。倫理指針等への適合性は、問題なしが20課題、問題ありが20課題であった。1課題につき21の確認項目があり、問題ありの20課題に合計32項目不適合があった。内容は同意書・CRFに関わるものが24項目(18課題)、研究実施の手続きに関わるものが6項目(6課題)、重篤な有害事象の確認に関わるものが2項目(2課題)であった。同意書・CRFに関わる内容は、最新版の説明文書・同意書が使用出来ていない等の文書管理や、研究分担者に追加されていない者が同意取得をした等の手続きに関するものが、24項目中17項目(15課題)で確認され不適合となりやすいことがわかった。原因としては研究責任者と研究分担者間での最新版の文書に関する情報共有不足や、人事異動に伴う手続きに要する時間を考慮出来ていないなどであった。自己点検の結果は、院長から文書で通知している。問題ありの場合、研究者は指示に従って必要な対応を行い、再発防止策も実施していた。不適合の内容により改善計画書の提出を義務づけており、研究者が行った対応については院長の指示に従いフォローアップ点検にて確認していた。また、院内の臨床研究セミナーや院内治験・臨床研究担当者会議で自己点検結果を報告し、研究者へ注意喚起を行っていた。
【結論】当推進室で構築し継続している自己点検活動は、不適合の確認と改善、再発防止や、院内研究者への注意喚起につながり、有用であると考える。不適合となりやすい内容については、今後も研究者に対する注意喚起や支援策の検討が必要である。