【目的】昨今、薬物動態や安全性の民族差検出を目的とした白人対象試験が増えてきている。当院では2009年に白人対象試験を初めて実施し、コロナ禍で試験数が一時減った時期があったものの、最近5年間は概ね年間5試験以上実施し、女性を含む年間100名以上の白人被験者を受け入れている。言語や文化、生活様式の違う白人被験者の受け入れには、日本人被験者とは異なる管理体制を敷かなければならない。一方、様々な出身国の被験者が集まるので、臨機応変な対応も必要とされる。さらに、異国の地で治験に参加する被験者の不安や戸惑いにも十分配慮しなければならない。これらを考慮した白人対象試験の入所中における管理・対応について報告する。
【方法】試験に関わったスタッフや被験者に聞き取り調査を行い、白人対象試験で考慮すべき事項を集積した。
【結果・考察】以下のカテゴリーに分類し、検討した。
1.コミュニケーション:同意説明・スクリーニング・投薬時の通訳スタッフ配置、日英併用の院内掲示物、翻訳機の活用、職員教育など。
2.身体的特徴:大きなサイズの衣類やベッドの準備、検査時の体毛やタトゥーへの配慮、屋内照明に対する眩しさへの対応など。
3.食事:嗜好、菜食主義、宗教上の食事制限などを考慮したメニュー。
4.その他:院内感染防止策、通訳スタッフへの相談体制、日本人被験者との関係など。
出身国としては北米・西欧地域が主だが、最近は南米、中東、中央アジアなどの参加者が増えてきている。このように多種多様な文化を背景に持つ被験者に対しては、画一的な管理では足らず個別な対応も必要となる。その最たるものが食事であり、白人対象試験における最大公約数的なメニューを策定するのは特に難しかった。パン食を基本に、鶏肉や麺類、中華を中心にメニューを組み立てているが、今後も被験者の意見を聞きながら改善をしていく予定である。
【結論】白人対象試験では日本人との差異のみならず、多様性にも配慮した管理・対応が必要である。詳細な内容は、学術総会のポスターに記載する予定である。