【目的】高齢者医療や介護のリハビリテーション(以下、リハ)の向上を目的とした質の高い臨床研究を実施するためには、地域の医療・介護施設における臨床研究の教育・支援が必要と考えられるが、これらの施設における臨床研究の実態は知られていない。我々は、臨床研究教育・支援対象として想定している地域でリハを行う医療・介護施設における臨床研究・倫理体制の実態を調査した。【方法】日本言語聴覚士協会公式ホームページで一般公開されている施設一覧を参考に選出した、愛知県内の主に成人を対象とする医療・介護施設208施設のリハ担当者宛に郵送にて無記名アンケート調査を実施した。また、実際に臨床研究の教育・支援を希望する施設を募集し、希望する施設を対象に希望する教育・支援内容について調査した。これらの調査をもとに臨床研究支援体制を構築することとした。【結果・考察】回答のあった67施設のうち成人を対象にリハを提供している66施設(31.7%)を分析対象とした。患者を対象とした研究を実施しその成果を学会発表もしくは論文投稿している施設を研究実施施設、それ以外の施設を研究未実施施設とした。研究実施施設であっても倫理指針の認知度は21/27(77.8%)に留まった。臨床研究の教育や支援を希望する施設の割合は、研究実施施設20/27(74.1%)、研究未実施施設23/39(59.0%)であった。希望する教育・支援内容については、研究実施・未実施施設ともに「統計学的解析」に対する希望が最も多かった。研究未実施施設においては、研究実施施設に比べて「研究計画立案」「倫理的配慮」「研究に関する文書の作成」「学会発表」に対する希望が多かった。実際に教育・支援を希望した施設は7施設あり、そのうち研究経験のある施設は研究者の能力に応じた教育・支援を希望していたが、研究経験の乏しい施設は、臨床研究に関わる全行程の教育・支援を希望していた。これらの結果から、施設や研究者の能力、研究課題の内容に応じた支援体制の構築が必要であると考えた。以上を踏まえて、現在実際に教育・支援を希望した7施設を臨床研究の実施状況によって施設を分類し、臨床研究に関する基本事項を学ぶ集団プログラムと研究課題毎に支援する個別プログラムを併用する形でプログラムを開始している。【結論】地域の医療・介護施設の実状に応じて支援体制を構築することで、実用的な教育・支援が可能になると考える。