【目的】医学教育モデル・コア・カリキュラムでは、「医師として求められる基本的な資質・能力」の一つとして、「患者の心理・社会的背景を踏まえながら、患者およびその家族と良好な関係性を築き、意思決定を支援する」というコミュニケーション能力が求められている。これを踏まえ、当講座の薬理学カリキュラムでは、1. 臨床における適切な薬物治療プロセスを早期に学ぶこと、2. 患者とのコミュニケーションの重要性を実感することを目的とし、医学科3年生に対してP-Drug演習(処方箋作成・毎年実施)およびロールプレイ演習(医療コミュニケーション・過去2回実施)を行っている。これまでは、両演習を異なる症例課題で個別に行ってきたが、本年度(令和3年度)は、新たな学修効果を期待して、P-Drug演習とロールプレイ演習を連携して同一症例課題で行った(P-Drug連携型ロールプレイ演習)。【方法】医学科3年生約110名を8グループ(各班12~14名)に分け、演習1週間前に症例課題を提示し、P-Drug演習として"診断の定義"から"処方箋"までを各班に作成してもらった。ロールプレイ演習では、各班からランダムに医師役(3名)、患者・患者家族役(3名)、コメンテーター(3名)を選抜し、P-Drug演習と同じ症例について薬物治療ロールプレイを実践してもらった。ロールプレイ終了後に、コメンテーターより使用薬物の基本情報(作用機序、副作用、禁忌、相互作用)について発表してもらい、演者以外の学生を交えて自由討論を行なった。【結果・考察】当講座では、ロールプレイ演習を過去に2回行っているが、いずれもP-Drug演習とは異なる症例課題を用いて個別に実施している。個別のロールプレイ演習後のアンケート調査では、「病気や治療の学習に役に立ったか?」、「患者さんの気持ちを理解するのに役に立ったか?」という質問に対して "強くそう思う"もしくは"そう思う"と回答した学生は81%、75%であったのに対し、今回のP-Drug連携型ロールプレイ演習後の同アンケートでは、95%、89%といずれも個別のロールプレイ演習より高い評価が得られた。その他、全てのアンケート項目において、P-Drug連携型ロールプレイ演習は個別のロールプレイ演習よりも学生の評価が高かった。【結論】アンケート結果から、P-Drug連携型ロールプレイ演習は、P-Drug演習とロールプレイ演習を個別で行う場合と比べて、高い学修効果が期待できると考えられた。