【目的】2020年に発生した新型コロナウイルスの感染拡大の波は繰り返し、高齢者の「生活不活発」によるフレイル高齢者が増えることが危惧されている.そのような状況の中,当保険調剤薬局(健康サポート薬局)は,2019年7月から地域在住高齢者を対象としてフレイル予防・対策のための介入を実施している.そこで今回,コロナ禍の前後のフレイルおよび栄養状態・食物摂取状況の変化について検討したので報告する.
【方法】対象者は65歳以上の高齢者で,コロナ禍前31名,コロナ禍29名であった.調査方法は,コロナ禍前においては対面による面接調査と身長・体重測定を実施し,コロナ禍においては全ての調査資料(基本チェックリスト,栄養状態調査,10食品目チェッカー,一般性セルフエフィカシー尺度(GSES))を郵送し,自記式質問票調査とした.なお,本研究は長崎国際大学薬学部倫理審査委員会の承認を受けて実施した.
【結果】2020年1月 (コロナ禍前)と2021年1月(コロナ禍)においてフレイルチェック結果のチェック項目数の有意な増加が認められ(p<0.05),69%の高齢者に増加が認められた.また,フレイルチェックの目的のうち「日常生活(暮らしぶり1)」と「社会的交流」は5倍の増加であった.この要因の一つに,コロナ感染拡大防止のための外出自粛の影響が考えられた(p値=7.665e-05,p<0.05).一方,栄養状態においては,85%の対象者が「栄養状態良好」 のまま維持できており,さらにコロナ禍前とコロナ禍の食品摂取多様性得点においては有意な差は認められず,95%の対象者が高群(7~10点)を維持でき,バランスの良い食事摂取が習慣化していることが窺えた.また,BMIにおいても91%の対象者が高齢者の目標値(21.5以上)を維持できた.一方,GSESにおいては有意な減少が認められた(p<0.05).
【考察】今回の結果から,コロナ禍での自粛生活による社会性および精神面の低下が原因と思われるプレフレイル,フレイルの増加は認められたが,栄養状態および食品摂取多様性において変化は認められなかった。これは当保険調剤薬局(健康サポート薬局)が実施しているフレイル予防・対策のための介入により習慣化されたと思われる低栄養予防の食習慣がコロナ禍においても継続されたことが窺える.このことからバランスの良い食事の習慣化に大きく寄与すると思われる本介入は「withコロナ」においてもフレイル予防の一助となると考えられる.