【はじめに】
報告者の所属する熊本大学病院地域医療・総合診療実践学寄附講座では、2019年に2日間の臨床研究のワークショップ(兵庫医科大学臨床疫学共催)を開催した。その中で、A M E D(日本医療研究開発機構)の教材である「事例から学ぶ公正な研究活動」の冊子の紹介があった。報告者は、さらに、2020年に他の同様のワークショップでもこの教材を使用したディスカッションを経験した。その後、2021年3月の総合診療科の開講で大学院生の受け入れが可能となった際に、臨床研究のスキルアップと研究へのモチベーションの向上のために、「研究倫理ワークショップ~臨床医のアカデミックな活動で気をつけておきたい研究公正・研究倫理を考えよう~」を企画・開催した。
【開催とその結果】
臨床研究トレーニングに組み入れ可能な能動的研究倫理学習プログラムに準拠して計画。新型コロナウイルス流行第5波の渦中であったので、zoomを使用したオンラインの開催とした。1時間30分で開催し、内容は、研究公正についてのレクチャー、2グループで2シナリオについてのディスカッションを行い、発表と共有、解説、質疑応答を行った。合計12名の参加があった。アンケートでは、2/3の参加者が研究公正や研究倫理の教育を受けていた。そのうち、このディスカッション形式で受講したものはいなかった。ワークショップの内容も全員が、ある程度以上役に立ったと答えており、今後の臨床研修に対する意識も変わったと回答していた。半数が同様のワークショップを自施設で実施したいと回答があった。
【感想など】オンラインでの開催であったが、使用するシナリオや資料の事前配布で参加者の理解度は高く、グループワークでの参加度合いも高かった。大学院での授業や大学病院の倫理講習会の受講に比べ、このようなディスカッションによる能動的学習の方が、自らが取り組む臨床研修に当事者意識を持って、研究公正や研究倫理の諸問題を考え、対応できる能力の開発につながるものと考えられた。報告者の感想としては、参加した時よりも企画・運営をした時の方が、学びが多かった。このパッケージ化された学習プログラムの実施を、参加者が自施設で行うことで、さらなる普及につながるものと考えられた。一方で、これらの問題に感受性のない医師に対する啓発活動と参加を促す仕組みの構築が課題として考えられた。