新型コロナウイルス感染症に世界が翻弄され始めた2020年初頭より、グローバルな製薬会社の研究開発部門でワクチンや治療薬の開発を進める中で、多くの学びを得た。査読論文や学会発表のみならずpreprintの情報やSNSからの情報が世の中に大きな影響を与え、また、薬事行政に政治的な要素が与える影響が無視できない状態となったのは世界的な傾向である。私はHPVワクチンにかかわる中で類似の経験があるが、新型コロナウイルス感染症は潜在的にあった課題を顕在化させ、可塑性のある社会システムの中で様々な要素が適応していくことを促進した面もある。この2年間を振り返りながら学んだこと、多様な考えを持つ市民、アカデミア、マスメディア、薬事規制当局、政府、製薬会社などがどのようにより良いコミュニケーションと意思決定をしていけるのか等に関して述べたい。