エヌトレクチニブは,NTRK1NTRK2NTRK3遺伝子によってコードされるトロポミオシン受容体キナーゼファミリー(TRKA, TRKB及びTRKC),ROS1及びALKチロシンキナーゼを強力かつ選択的な阻害活性を有する抗悪性腫瘍剤である。エヌトレクチニブはイタリアNerviano Medical Sciences社により創製され,その後,第I相試験を経て,米国Ignyta社及びスイスRoche社によりNTRK融合遺伝子陽性の固形癌等を対象とした国際共同第II相試験(STARTRK-2試験)が実施された。
STARTRK-2試験はNTRK1/2/3, ROS1又はALK融合遺伝子陽性の進行・転移の固形癌患者を対象としたバスケット試験として実施された。核酸ベースの検査により,各遺伝子が陽性と診断され,適格と判断された患者が特定のコホートに割り付けられた。有効性はコホートごとに評価された。
STARTRK-2試験を主要な試験成績として,エヌトレクチニブは日本において世界に先駆けて「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌」の適応を取得し,その後「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応も取得している。本発表では,エヌトレクチニブの開発経緯について紹介する。