2019年6月にがん遺伝子パネル検査(パネル検査)が保険承認され、固形がんを対象とした2種類のパネル検査が実施できるようになった。これらはいずれも腫瘍組織を用いる検査である。そして、2021年3月に血液検体を用いるリキッドバイオプシーが新たに承認された。これらのパネル検査の結果は、いずれもがんゲノム医療中核拠点病院あるいは拠点病院のエキスパートパネルの検討を経て患者に返却される。約9割の患者には推奨される治療はなく、保険診療の治療が推奨されることもまれであり、残り1割の患者が臨床試験や治験の候補となる。したがたて、臨床試験コーディネーター(CRC)がパネル検査に関わるのは、パネル検査後に臨床試験や治験の候補症例として紹介されてからとなる。一方、近年の抗がん薬の治験ではパネル検査はすでに一般的となっており、多くのCRCが日常業務のなかでパネル検査を経験している。この場合、パネル検査の結果は治験登録の判断に用いられてきた。したがって、CRCは保険診療で行われるパネル検査と臨床試験や治験で行われるパネル検査の結果の取扱いの違いについて、明確に認識しておく必要がある。例えば、臨床試験や治験で実施したパネル検査の結果により保険適用の薬剤投与を検討する場合は、保険承認されたコンパニオン診断もしくはパネル検査の結果が必要となる。さらに、保険承認されたパネル検査は一生に一度しか実施できないため、適応や実施のタイミング、提出できる検体の有無や状態など、臨床試験や治験で実施されたパネル検査の結果がすでに判明している被験者では、保険診療として実施するパネル検査との「兼ね合い」をよく見計らって支援する必要がある。これまで、CRCは臨床試験や治験を保険診療と明確に区別してきたが、このたびのパネル検査の保険承認によって、ある部分では保険診療とシームレスに関わらなければならなくなった。