遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因遺伝子であるBRCA1・BRCA2に病的バリアントが存在した場合、PARP阻害剤の適用が2018年に保険収載された。その適用対象のがん種が現時点では乳がん・卵巣がん・前立腺がん・膵がんと広がりつつある。しかし、BRCA1・BRCA2の病的バリアントが他のどのがん種についてリスクを上げるか大規模な解析がなされておらず、その結果、PARP阻害剤の治療効果が他のどのがん種で期待されるかも明らかになっていない。さらには、他の相同組換え修復に関わる遺伝子のどれがどのがん種の発症に関わるかも解析がなされていなかった。 そこで、2015年から理研ではバイオバンク・ジャパン保有の14種のがん合計7万人、非がん対照群3万人の合計10万人について、BRCA1・BRCA2など遺伝性腫瘍関連遺伝子について解析を進めている。これまで、乳がん・前立腺がん・大腸がん・膵がんについては論文化され、その内容は診療ガイドラインにも取り込まれている。現在、他のがん種についても探索的な解析を行っており、本シンポジウムでは最新の結果を報告する。