地域包括ケアシステムの構築が推進され、病床の機能分化・集約とともに在宅療養が促進されている。在宅では病院と異なり、服薬の管理は多くの場合、本人や家族に委ねられている。我々が訪問看護師を対象に、睡眠薬が関与していると推察される有害事象について行ったインタビュー調査では、在宅での有害事象は、早期発見されない事例がほとんどで、同居家族がいても転倒の第一発見者はヘルパーである場合や、訪問看護師が訪問した際に発見され、受診して骨折が明らかになる例があった。また、本人の同意が得られず服薬状況が把握できないなかで転倒が発生した例や、睡眠薬の見直しと介護負担軽減との折り合いを付けることが容易ではないために、介護者の意向を重視して睡眠薬の使用を継続せざるを得ないといった在宅特有の状況も明らかになった。これらの背景要因には、認知機能の低下、独居や老々介護、家族の介護負担、同居家族との希薄な家族関係が見出された。患者の身体的状態だけでなく、服薬管理に対する患者・家族の意向、家族の介護に対する協力や負担の程度、服薬をめぐる患者と家族のパワーバランスなど、様々な条件が異なる在宅では病棟とは異なる対応が求められる。
在宅での服薬管理には患者・家族の協力は不可欠となる。生活状況も含めた包括的な服薬アセスメント、自律性を基盤にした服薬アドヒアランス向上の支援、患者・家族のエンパワメント、医師・薬剤師・ケアマネジャー・ヘルパーとの連携と協働といった、訪問看護師に求められる在宅服薬支援に関するコンピテンシーを明らかにし、これを育成することが課題であると考えられる。