アルツハイマー病における特徴的病理像である老人斑と神経原線維変化は、それぞれアミロイドβ蛋白、タウ蛋白を主要構成成分とするミスフォールディング蛋白病変である。ミスフォールディング蛋白の脳内蓄積はシナプス機能障害や神経変性の誘因となることから、これらの蛋白を標的とした治療薬開発が進められてきた。このような治療薬開発においては、両蛋白を生体画像化するアミロイドPETとタウPETが画像バイオマーカーとして重要な役割を担う。特に病初期におけるアルツハイマー病関連病理の存在確認やそのモニタリングが必要とされる臨床試験においては、治療対象者の選別や薬効評価に欠かせないツールとなっている。アルツハイマー病の患者脳では、活性化したミクログリアやアストロサイトの集簇も併せて観察される。これらの活性化グリア細胞は炎症性サイトカインの分泌促進などを通じ、神経変性に積極的に関与すると考えられている。近年、このようなグリア細胞の活性化状態をモニタリングするための画像診断技術も急速に進歩している。反応性アストロサイトのミトコンドリア外膜にはモノアミン酸化酵素B(MAO-B)の高発現がみられるため、MAO-Bを認識するPETプローブはアストログリオーシスの生体イメージングに利用可能である。我々はMAO-Bへの高親和性を示すTHK-5351の化学構造を部分的に改変し、MAO-Bへの結合選択性に優れた新規PETプローブ[18F]SMBT-1を開発した。本シンポジウムではSMBT-1の開発経緯や最近の臨床研究について紹介したい。