PET腫瘍イメージングの幕開けは[F-18]FDGの登場から始まる。これはもともと脳の糖代謝を測定するために開発されたが、悪性腫瘍で糖代謝が亢進していることから大変明瞭なイメージングが可能となった。その後、PETがん検診の普及や2002年の保険収載に後押しされ、FDG PETはがん診療に不可欠なmodalityとしての地位を確立した。中でも遠隔転移や再発の検出、分子標的治療薬の治療効果判定などに関する高い診断能が数多く報告されている。ただし脳腫瘍に関しては、脳への生理的集積が低い[C-11]methionineや [F-18]FACBC、 [F-18]FBPAなどの使用が望まれる。こういったアミノ酸製剤は体幹部腫瘍にも応用されたが、広く普及するには至らなかった。東北大学サイクロトロン・RIセンター(CYRIC)では独自の腫瘍イメージング製剤の開発もなされており、我々は低酸素イメージング製剤18F-FRP170を用いた基礎研究から臨床応用までの橋渡しを行った。悪性腫瘍内の低酸素細胞分画は放射線治療や化学療法に抵抗性であるため、これらを画像化・定量化することにより効果的なテーラーメイドがん治療を行うことを目的としていた。その後ヨーロッパを中心に、より特異的な腫瘍イメージング製剤のターゲットとして前立腺膜抗原(PSMA)や神経内分泌腫瘍のソマトスタチン受容体が注目され、盛んに研究がなされた。いずれも18Fや68Ga標識によるPETイメージングのみならず、α線・β線放出核種の標識による核医学治療まで報告されている。まさに治療を見据えたイメージングという"セラノスティクス"がヨーロッパを中心に展開されている。残念ながら我が国におけるセラノスティクスは諸外国に比べて大きな遅れを取っているが、本年6月に我が国で神経内分泌腫瘍の核医学治療薬[Lu-177]Lutatheraが承認されたことは嬉しい知らせであった。さらに海外では線維芽細胞活性化タンパク阻害剤(FAPI)のPETイメージングが盛んになりつつあり、多くのがんが高いコントラストおよび少ないバックグラウンドで描出されることが報告されている。これも将来的に核医学治療への応用が期待される。このように最近の腫瘍イメージングは、核医学治療薬の開発と相まってこれまでにない程の盛り上がりを見せている。特異的なPETイメージングによるモニタリングと侵襲の少なく効果的な核医学治療の組み合わせが、今後一層発展していくことを願う。