新型コロナウイルスが出現してから早2年が経過しようとしているが、その間に我々は様々な危機的事態を経験し、対応し、そして実践してきた。具体的には、武漢市からのチャーター機や大型クルーズ船からの感染者受け入れ、指定感染症の規定に基づく行政検査と医療対応、新型インフル特措法の適用と緊急事態宣言等の実施、保健所からの病床確保の要請、院内クラスターの発生、地域医療の逼迫、医療従事者の過労働、医療従事者とその家族に対する偏見と差別の発生などである。また病原体や疫学に関する知見の集積によって、検査法が質的・量的に進歩した。当初の鼻咽頭ぬぐい液からのPCR法といった感染リスクを伴う検査法から、より安全な唾液によるPCR検査、さらには他の遺伝子検査や抗原検査が利用可能となった。疫学調査で判明したエビデンスに基づいて、無症状者のマイクロエアロゾルの感染性、3密などの感染リスクが高い状況の存在が明らかとなり、感染可能期間中の接触による濃厚接触者の特定などが可能となった。さらに、ワクチンの開発と輸入ワクチンの導入等が行われた。その一方で、保健所機能と医療のひっ迫、コロナ流行下での災害復旧、変異株の出現、緊急事態宣言下での東京オリパラの開催といった問題や課題にも直面した。未知なる新興感染症と向き合うためには、これらの経験をレガシーとして次に備える必要がある。本シンポジウムでは、これらの課題解決のための産官学の役割と、相互連携の在り方などについて述べたいと思う。