2016年11月にICH-E6(R2)が合意されたが、現在早くもICH-E6(R3)として次なる大改定の作業が進んでいる。短期間に再改定が行われることになった背景には、(1)ICH-E6は薬事承認を目指した臨床試験が前提になっているが、実質的にそれ以外の臨床試験にも適用されている、(2)多様化する臨床試験デザインに対応していない、(3)ICH-E6改定により直接影響を受けるアカデミアや患者がガイドライン策定に関わっていないという、主にアカデミアからの不満があった。これを受けて様々なステークホルダーからの意見を取り入れつつ改定作業が行われることになり、日本でもアカデミアを中心とした厚労特別研究班が組織された。
研究班でまず問題になったのは、ICH-E6の適用範囲である。欧州でも同様の問題が生じているが、日本でもICH-E6が、薬事承認を目的としない医薬品の臨床試験や、医療機器の臨床試験など、どこまで適用されるかは明らかではない。日本でも今後特定臨床研究の薬事への利活用が議論される見通しであるが、ICH-E6の適用範囲にコンセンサスがないという問題の解消を図るべきである。また、ICH-E6(R3)では"proportionality"の概念がさらに推し進められ、被験者やデータのリスクと情報の重要性に応じた、適切な品質管理が行われる方向に向かう。さらに、治験以外のリアルワールドデータの利活用についてもAnnex 2と呼ばれるパートで言及されることになっている。日本でもレジストリデータの利活用に関する2つの通知が厚生労働省より2021年3月に発出されたところであるが、pragmatic trialやdecentralized trialの議論は日本では進んでおらず、Annex 2の策定に間に合うように議論を進めるべきである。
いずれにしてもデータの信頼性を画一的に考えれば良いという時代は終わり、治験、特定臨床研究、レジストリの外部対照利用など、目的によって信頼性の水準を使い分け、適用する臨床試験を選択する時代がすぐそこに来ていると言えよう。