ICH E6ガイドライン(医薬品の臨床試験の実施の基準)は1996年に発行され、技術革新や"risk-based approach"等の新たな概念への対応を目的に2016年にE6(R2)へ改訂された。その際、研究者達の国際コンソーシアム等より、試験の多様化に伴う被験者のリスクの相違への配慮が十分でない等の批判がICH及びEMAにパブリックコメントとして寄せられたため、ICHはICH E8ガイドライン(臨床試験の一般指針)の近代化及びそれに続くE6ガイドラインの改訂に関する計画として"GCP renovation"を公表した。本計画に従い、時代を経て多様化した開発手法や試験デザイン・データソースへの対応、"Quality by Design" と表現される考え方の臨床試験への導入、E8ガイドラインが担うべき関連ガイドラインの「道案内」としての役割の強化等を目指し、E6及びE8ガイドラインの改訂が進められている。E8(R1)の検討は2017年より開始され、2021年10月にICHにおける最終合意が得られStep4に到達した。
一方、E6(R3)についても、"GCP renovation"の一連の作業が開始された。具体的には、2019年6月のICH会合にてE6(R3)が新規トピックとして採択され、同年11月のICH会合においてConcept paper及びBusiness planが承認された。E6 (R3)は Principles、Annex1及びAnnex2から構成され、2020年5月及び11月には、対面会合を予定していたICH会合をバーチャル会議として実施し、Principles(原則)を中心に検討を行った。2021年4月には、Principles案を公開し、同年5月に無料パブリックウェブカンファレンスにて最新の検討状況を報告した。2021年5-6月には、ICH会合(バーチャル)において、主にAnnex 1に関して議論を進め、2021年11月に開催予定のICH会合(バーチャル)においても引き続きAnnex1の草案について検討することが予定されている。また、本ガイドライン改訂にあたってはアカデミア団体や患者団体等の様々なステークホルダーからの意見を取り入れながら検討を進めている。
本セッションでは、"GCP renovation"に基づくICH E8及びE6ガイドラインの改訂に至った背景、方向性及び最近の動向について共有する。