GCP Renovation(ICH-E6)では、治験のような薬事承認をゴールとする臨床試験が前提となっているが、アカデミア(医療機関等)で実施されている臨床研究に占める治験の割合は極めて少ないのが現状である。アカデミアで実施している臨床研究の目的やデザインは、薬事承認のみならず、医薬品等の作用機序や疾患・病態の解明に加えて、医薬品と医療機器の組み合わせや画像診断機器とデモグラフィックデータの組み合わせによるアルゴリズム機器の開発など極めて多様化している。現時点ではこのようなアカデミアの状況にGCP Renovationは対応ができていない。さらにGCP Renovationの主体は、製薬企業と規制当局であり、令和2年度厚生労働科学特別研究事業「ICH-GCP改定における国内ステークホルダーの参画のための研究」を除いて、アカデミアは関与できていないので、多様性に富むアカデミアでの臨床研究は、GCP Renovationに対応し辛い状況である。
しかしながら、GCP Renovationの根幹部分をなす臨床研究の信頼性の確保、質の向上は、アカデミアとしても積極的に取り組むべき事項である。特に、Quality Management(QM)で示されている「被験者やデータのリスクと情報の重要性に応じたQMやRisk Management(RM)を実施すべき(E6(R3))」との提案は重要なポイントと認識している。
そこで、臨床研究の信頼性向上のために研究責任者(PI)及び統計、スタディマネジャ(StM)、データマネジャ(DM)、モニター(MO)、CRC等の支援職種に対して、QMやRMの概念を教育するシステムを開発している。また、臨床研究の計画立案の早い段階からQMやRMのトレーニングを受けて知識・スキルレベルが向上した各支援職種が研究計画の作成に取り組むことができるようなシステムの開発に取り組んでいる。この多職種連携システムでは、PIのみならず各支援職種の研究計画作成に関する知識・スキルレベルが格段に向上する傾向がみられている。
本シンポジウムでは、これらの活動の一端を紹介し、臨床研究の信頼性確保・向上について、議論を深めたい。