2009年、我々はゲノムワイド関連解析(GWAS)により、C型慢性肝炎に対する当時の標準治療であったペグインターフェロン(PEG-IFN)+リバビリン併用療法の有効性に関連するIL28B遺伝子多型(SNP)を同定した(Tanaka Y, et al. Nat Genet 2009)。これまで報告されているウイルス側因子のみでは治療前効果予測は不十分であったが、IL28B SNPの発見により、80%以上の確率で有効/無効を予測できるようになった。2010年には「IL28Bの遺伝子診断によるインターフェロン治療効果の予測評価」として先進医療に認可され、C型肝炎の個別化治療の道を開いた。さらに、この発見により新規治療薬の開発が進み、現在主流となっている直接作用型抗HCV薬(DAA)が早期に臨床応用された。現在、HCVは容易に駆除できる時代となったが、今なおHCV治癒後の肝がん症例が散見される。2017年、GWASによりHCV治癒後の肝発癌に関連するTLL1(トロイド様遺伝子1)SNPを同定し、既存の因子を組み合わせることで、DAA治療後の肝発癌リスクの高い患者群を絞り込むことが可能となった(Gastroenterology 2017)。この遺伝子はメタロプロテアーゼの1種で、NASH線維化にも関連していることを報告(J Gastroenterol 2018)、肝線維化・発癌メカニズムの解明、新規治療法の開発に繋がる。以上、GWASにより得られた因子の臨床的意義について触れる。