医薬品医療機器総合機構(PMDA)の職員が、医療系学会等の認定資格を取得することは、社会から医学・薬学に関する高い見識を持つ専門家と認められ、PMDAの業務の質の向上を図る上でも有用と考えられる。特に臨床薬理学は、PMDAが担う医薬品の承認審査・安全対策・副作用被害救済に関連した業務に深くかかわる学問分野である。そこで、PMDAでは、業務内容や既存の研修プログラムの中から、臨床薬理学会の研修ガイドラインに基づく臨床薬理学研修カリキュラムを策定し、令和2年1月、臨床薬理学会認定薬剤師制度の研修施設認定を取得した。これにより、職員がPMDAでの業務を通して研鑽を積みながら認定薬剤師を目指すことが可能となったため、PMDAの臨床薬理学会指導薬剤師等が職員に対して行っている認定取得支援の取組みの一部を紹介したい。
まず、認定薬剤師制度の認知度を高めることを目的に、職員向け説明会を開催し、医療系学会認定資格取得の意義、臨床薬理学会認定薬剤師制度の概要、申請要件、PMDAにおける臨床薬理学研修カリキュラム等について解説した。説明会後のアンケートの結果、認定薬剤師を目指そうと思った職員が増加したが、調査・研究の実施を認定取得上の課題としてあげる職員が多かった。また、指導薬剤師に対し、研究への従事の方法や具体的な事例紹介の要望が多く認められたため、フォローアップ説明会を実施した。
フォローアップ説明会では、PMDAが提供できる研究の場、研究への従事の方法や制度面の支援、指導薬剤師による具体的な研究事例等を解説した。フォローアップ説明会後には、日常業務に関連した研究テーマを考える職員が多く、実際に研究をはじめたいと思った職員が半数を超えた。また、研究したいテーマがあるものの開始が難しいと回答した職員に対し、指導薬剤師が個別に助言を行った。
さらに、PMDA内のイントラネットに、医療系学会等の認定資格支援に関するページを作成し、内部向け説明会資料の掲載や臨床薬理学会の学術集会の周知等を行っている。また、各部においても職員に対し研究活動の支援や学会情報の提供等を適宜実施している。
PMDAにおける業務や研究を通して培った知識や経験を、国民がより有効でより安全な薬物治療の恩恵を受けられるよう活かす上でも、臨床薬理学会認定薬剤師を目指し研鑽を積むことは有用である。今後とも、指導薬剤師等による職員への様々な支援の継続が必要と考える。