臨床薬理学会認定薬剤師は、その目的に、国民がより有効でかつ安全な薬物治療の恩恵を受けられるために貢献し、併せて臨床薬理学の普及向上を図ることがある。近年、次々と生み出される画期的な治療及び新薬を適切に使いこなすべく、薬物療法は大きな変革を迫られ、パラダイムシフトを続けざるを得ない状況にある。この場合、薬物治療の基盤は、まさにエビデンスに基づく臨床薬理学であり、認定薬剤師はその専門家として、多岐にわたる活躍が期待されている。
ここで、製薬企業で医薬品開発を行う場合、認定薬剤師が貢献できることについて考えてみたい。言うまでもなく製薬会社は、良質な医薬品をその情報とともに適切かつ迅速に患者に届ける責任を有する。その際、安全性を確保しつつ、治験薬の効果を最大限に発揮させる用法・用量を科学的に設定することが特に重要と考えられるが、これは薬物動態理論の臨床応用を得意とする臨床薬理の専門家として、その役割を大いに発揮できる点である。例えば、モデリング&シミュレーションアプローチは、十分にコントロールされた質の高い臨床試験成績に基づいて、投与量と有効性/安全性の関係(曝露-応答関係)を明らかにする方策で、新規用法・用量承認をめざす開発戦略を科学的にサポートするものである。その有用性と限界を理解した上で、これらの方策を使いこなすことも、重要な役割の一つと考える。
このように臨床薬理学の叡智を結集させて勝ち取った承認後、それがいかに最適な用法・用量であっても、その科学的根拠や背景を十分に理解し、重要な事項は遵守して使用いただかなければ、有効性が発揮されないばかりか、患者を副作用で苦しめてしまうと、結局は臨床で使っていただけないという状況を招きかねない。こういった状況を回避するためにも、開発時に収集した治験薬の情報を、過不足なく臨床現場に届ける必要がある。ここでも、薬物治療の合理的かつ科学的遂行のために、認定薬剤師の強みを活かした貢献ができる。
本発表では、医薬品開発に認定薬剤師として携わることの意義と楽しさの一端をお伝えできれば、と考えている。