【目的】
革新的なアカデミア発創薬のため整備されてきたAROは来年度から橋渡し認定事業が開始され新たな局面を迎える。AMED ARO機能推進事業の昨年度結果を中心に我が国におけるAROの多様性とその活用についてご紹介する。
【方法】
ARO機能を有すると考えられる病院に対し、リソース指標(FTE人数、人件費等)、成果指標(医師主導治験数、実用化製品数等)それぞれについて調査票形式による調査を実施した。
【結果・考察】
129の機関から有効な回答を得た。得られた調査票項目を57に縮約し、リソース、成果を敢えて区別することなく主成分分析を行った。臨床試験関連中間成果(企業治験等)が臨床試験支援人材(CRC等)と共に多くは上寄りに布置されており、第3主成分(y軸)上方向はエビデンス創出に関連した方向性を示していると考えられる。逆に臨床試験以外の中間成果(特許等)やライセンスアウトといった最終成果は、臨床試験関連以外の支援人材(プロジェクトマネージャ等)と共に多くが下寄りに位置しており、下方向は実用化指向を表していると解釈される。一方、横方向について第2主成分(x軸)では再生医療・医療機器や倫理指針試験等、コスト負担や個別対応を求められるような「創意工夫」が必要なリソース要求度の高い項目や獲得研究費が右に位置しており、高リソース要求容認を表していると判断される。逆に左には患者申出療養や医師主導治験などの規制の強い試験群とそれに必要な臨床試験実施関連のリソース(phase I施設等)が並んでおり規制が強いが定型的な業務として収益を上げやすく、比較的リソース投入がし易い方向性(収益性が高い)を示していると判断される。施設スコアについては昨年度と同じく第1主成分(規模)の小さなその他の病院が原点付近に集まり、結果的に平均的な特性になったと判断される。拠点やARO規模の大きな特定機能病院は負荷図に沿った特徴に従って外側寄りに分布していると解釈される。
【結論】
我が国のAROはエビデンス/実用化指向性、コスト容認/効率重視の方向性の違いにより大まかに分類され、拠点AROが特に特徴ある分布を示した。結果を利用してAROの特徴を可視化したポータルを作成し、研究者とAROのマッチングが容易となるよう公開した(https://www.aro-portal.com/ja/home)。本邦全体としてARO機能が広く整備され、橋渡し研究を目指す研究者に必要な支援が行き渡ることが肝要と考えられる。