本セミナーでは、最新のプロテオミクス技術(PEA法)を用いて重症新型コロナ感染症における主要血漿蛋白質を同定し、予後および遷延性呼吸障害と関連する新規バイオマーカーを開発したことを報告する。ヒト血漿サンプルの分析にはExplore 1536と呼ばれるオーリンクプロテオミクス社の約1500タンパク質を同時に測定する分析手法を用いた。
PEA法を用いて得られた公共の306例の血漿プロテオミクスデータを第1解析コホートとし、非重症群と比較して重症群で有意に上昇する24つの蛋白質を抽出した。続いて53例の第2解析コホート(大阪大学附属病院)のデータより、早期呼吸回復群と比較して呼吸回復遷延群/死亡群で有意に上昇する蛋白質のうち、第1解析コホートと共通する5つの蛋白質を抽出した。検証コホート115例を用いて、5つの蛋白質をELISAで検証し、予後と遷延性呼吸障害と関連する4つの蛋白質(WFDC2, CHI3L1, GDF15, KRT19)を同定した。ネットワーク解析において、4つの血漿主要蛋白質はネットワークを形成した。4つの蛋白質を用いた潜在クラスター解析で、予後の異なる4つの分子病態型に分類された。ROC解析では、4つの蛋白を組み合わせた複合スコアは予後と高い関連を認めた。同定した4つの血漿蛋白質を組み合わせることで、予後と遷延性呼吸障害に関連する新規分子病態型と複合予後予測マーカーが開発された。これらは、重症新型コロナ感染症における新たな治療標的かつ治療指標として臨床応用される可能性がある。