血小板活性化因子(platelet-activating factor, PAF)は血小板凝集能を持つ分子として発見されたが、強力なリン脂質メディエーターであり、アレルギー、炎症、神経障害性疼痛惹起や維持に関与する。我々が同定した2種類のPAF生合成酵素の一つは恒常的に働くリゾホスファチジルコリンアシル転移酵素1(LPCAT1)で、もう一つは細胞外刺激に応じてリン酸化(活性化)や発現上昇する誘導型のLPCAT2である。この2分子の関係はプロスタグランジンを合成するシクロオキシゲナーゼ (COX)1と2の関係に似ている。本発表では(i)リン脂質であるPAFの紹介、(ii)2種のPAF生合成酵素の比較とLPCAT2の調節メカニズム、(iii)PAF生合成とアレルギー、(iv)PAF生合成と神経障害性疼痛、(v)LPCAT2の阻害剤と構造予測について紹介する。PAFは1970年に発見され、1991年にPAF受容体、合成酵素は2007年、2008年に報告された。近年ようやく合成酵素欠損マウス表現系や阻害剤の情報が得られつつある。本セッションでは、生化学的な内容から遺伝子欠損マウス表現系を含めて議論したい。