鎮静性抗ヒスタミン薬が脳に移行すると鎮静作用を引き起こし、知らず知らずのうちに仕事や学習の作業効率を低下させて、自動車運転ミスを誘発してしまうことがある。¶鎮静作用の強さを評価する方法としては、①主観的眠気や②客観的なパフォーマンス測定などが指標として用いられてきたが、眠気を感じなくてもパフォーマンスが低下している例もあり、一定の客観性が求められる。パフォーマンス測定では、コンピュータ試験や自動車運転試験などが実施されてきたが、全般的に多数の試験回数が必要となる。新たな評価方法として、服用した抗ヒスタミン薬が脳内へ移行した状態を、ポジトロン断層法(PET)を用いて、「脳内ヒスタミン受容体占拠率」として測定することも可能である。PETを用いることで、鎮静作用が弱い抗ヒスタミン薬の微妙な差を比較することもできる。また、自動車運転は日常的な動作ではあるものの、かなり高度な神経情報処理が必要とされている。脳画像科学を生かして運転能力低下の脳内メカニズムを解明することで、効果的な事故予防策が開発される可能性もある。¶本セミナーでは、実験室環境におけるコンピュータ試験や野外自動車運転試験、運転シミュレータ試験の結果に加えて、PETによる脳画像研究の成果をご紹介させていただきつつ、抗ヒスタミン薬を用いた治療に関する理想的なストラテジーについて情報提供させていただきたい。