【目的】Vonoprazanが上市され、H. pylori除菌治療の除菌率は飛躍的に向上し、容易に治療を完了できるようになった。しかし薬剤アレルギー歴のある患者に対するH. pylori除菌治療は使用できる薬剤が限られ、副作用も懸念されるため難解な治療として認識されており、除菌治療における残された課題の1つである。薬剤リンパ球刺激試験(DLST)はin vitroで行う検査のため、負担が少なく感作のリスクもない。我々は問診で薬剤アレルギー歴がある患者に対し、治療前に使用が予想される薬剤に対するDLSTを実施し、薬剤選択を行ってきた。今回、各薬剤のDLST陽性率を検討した。【方法】当院のピロリ菌専門外来を受診した患者のうち問診で薬剤アレルギー歴があり、DLSTを実施した症例を抽出した。DLSTはVonoprazan(VPZ)、Amoxicillin(AMOX)、Clarithromycin(CAM)、Sitafloxacin(STFX)、Metronidazole(MNZ)、Minocycline(MINO)の6剤について施行し、各薬剤の陽性率を検討した。【結果】問診で薬剤アレルギー歴があり、DLSTを実施した症例は77名であった。なお、DLSTを施行した薬剤には欠損値を認める。問診で薬剤アレルギーと申告された薬剤または除菌治療でアレルギーがあった症例は、除菌治療薬39名(50.6%)、ペニシリン系 26名(33.8%)、マクロライド系 6名(7.8%)、キノロン系 3名(3.9%)、ニトロイミダゾール系 0人(0%)、その他・詳細不明6名(7.8%)であり、前治療でアレルギー歴のある患者がもっとも多く、次いでペニシリン系が多かった。一方、DLSTではPPI 0名(0%)、VPZ 6名(8.5%)、AMOX 12名(16.7%)、CAM 5名(7.4%)、STFX 3名(4.2%)、MNZ 14名(20.0%)、MINO5名(7.7%)で陽性を認めた。【結語】問診ではペニシリンアレルギーが多いが、DLSTを行うとMNZが最も陽性率が高く、また他剤も少ない割合ではないことが分かった。薬剤アレルギー歴を有する患者には、慎重な薬剤選択が必要である。