【目的】新規注射用シデロフォアセファロスポリン抗菌薬であるcefiderocolはカルバペネム耐性グラム陰性菌に有効であり,欧米において成人への使用が承認されている.現在,生後3ヶ月から18歳未満の小児患者を対象とした臨床試験が実施されており,3ヶ月未満の乳児及び新生児を対象とした試験も計画されている.乳児及び新生児は臓器成熟度に応じて薬物動態 (PK) が変化するため,成熟度群ごとに適切な被験者数のデータを収集することがPK評価に望ましいと考えられるが,低年齢患者の登録は容易ではない.そこで,PKパラメータの推定精度を指標として,cefiderocolの小児PK評価に必要な乳児及び新生児の被験者数,及び成人又は早産児データの必要性を評価した.【方法】これまでに,成人データに基づいて体重及び臓器成熟度の影響を考慮したcefiderocolの小児PK予測モデルを構築した [1].本小児PK予測モデルに基づいて,3ヶ月未満の詳細な年齢区分及び各区分での症例数について種々の条件を想定したシミュレーションを行い,各条件でのPKパラメータ推定精度をStochastic Simulation and Estimation (SSE) により評価した.成人データの有無または低妊娠後週齢 (PMA) の患者データの有無が推定精度に与える影響を評価した.SSEはNONMEM及びPerl-speaks NONMEMを用いた.【結果・考察】18歳未満のデータのみで解析した場合,各パラメータの推定精度は4.9~593.7%(CV,変動係数)であったのに対し,成人データを含めた場合,全てのパラメータについて20%未満であり,成人データが小児も含めた母集団PKパラメータの推定に有用であることが示唆された.3ヶ月未満の症例数が腎機能の成熟度に関するパラメータの推定に影響を与えること,また,少なくとも15例のデータが利用可能であれば精度よく推定できることが示唆された.成熟度の予測因子であるPMAに基づいた検討より,PMA37週齢未満3例を含む生後3ヶ月未満9例,もしくはPMA32週齢未満1例を含む生後3ヶ月未満7例の場合,全パラメータに対するCVが20%未満であった.【結論】Model-basedアプローチを用いて腎機能の成熟に依存するcefiderocolのPKの評価に対して,必要な乳児及び新生児の被験者数を提案することができた.腎排泄型のβ-ラクタム系抗菌薬においても同様の手法が適用できると考えられる.【参考文献】[1] Katsube T, et al. Poster Abstracts, 739. IDWeek 2019, Washington, DC.