【目的】ペランパネル(PER)は,α-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazole propionic acid (AMPA) 受容体拮抗作用を有する新規抗てんかん薬である.PERは主にCYP3A4による代謝を受けるため,同酵素を誘導するカルバマゼピン(CBZ)等の抗てんかん薬の併用は,PERの薬物動態に大きな影響を与えることが知られている.しかしこれまでに,実臨床データを用いてCBZとPERの相互作用を記述したPPKモデルは報告されていない。本研究では,TDMデータを用いて,CBZの併用の影響を考慮したPERのPPKモデルを構築することで,その適正使用に有用な情報を提供することを目的に検討を行った.
【方法】九州大学病院にて,PERの投与が行われ,その血中濃度測定が実施されたてんかん患者64名を解析対象とした.患者背景,臨床検査値,併用薬についての情報を電子カルテよりレトロスペクティブに収集した.対象患者のうち,CBZの投与およびその血中濃度測定が行われていた者については,それに関連するデータも同様に収集し,PER血中濃度と併せて解析を行った.PERおよびCBZの薬物動態を表現する構造モデルとして,1-コンパートメントモデルおよび2-コンパートメントモデルを候補とした.加えて,CBZによる薬物代謝酵素の誘導を考慮するために,代謝酵素コンパートメントを仮定し構造モデルに組み込んだ.年齢,性別,体重を含む各種臨床検査値,併用薬を共変量候補とし,尤度比検定に基づき共変量の選択を行った.上記の解析にはNONMEM 7.4.3を用いた.本研究は,九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果・考察】 対象患者より,PERおよびCBZの血中濃度測定値がそれぞれ133点および55点得られた.PERおよびCBZの薬物動態は,いずれも1-コンパートメントモデルにより表現された.加えて,代謝酵素コンパートメントの導入により,CBZ濃度依存的なPERのクリアランスの誘導を表現した.共変量探索の結果,PERのクリアランスに影響する因子として,性別の影響が組み込まれた.
【結論】本研究では,TDMデータを用いて,CBZの併用の影響を考慮したPERのPPKモデルを構築した.本研究で構築したモデルは,抗てんかん薬併用療法におけるPERの適正使用に寄与すると考えられる.