【目的】アルツハイマー病(AD)は認知症の原因の半数以上を占める。プレセニリン1(PSEN1)遺伝子は、若年性家族性アルツハイマー病の原因遺伝子として最も多く、現在PSEN1-ADに対する効果的な治療法はない。疾患特異的iPS細胞を用いたドラッグスクリーニングにより、既存薬ライブラリの中から、ブロモクリプチンがPSEN1-ADの治療薬となる可能性が示され、今回我々はPSEN1-ADに対するブロモクリプチンの医師主導治験を計画した。【方法】 本医師主導治験は、第I/II相、多施設共同、プラセボ対照、ランダム化並行群間比較試験であり、MMSE-Jスコアが25以下のPSEN1-AD患者を実薬4例以上、プラセボ2例以上集積する予定である。被験者は2:1の割合でブロモクリプチン内服群、もしくはプラセボ内服群に割り付けられる。本治験は8週間のスクリーニング期、37週間の二重盲検期、13週間の継続投与期から構成される。二重盲検期は、ブロモクリプチン1日量10mgまでの低用量期、およびブロモクリプチン1日量22.5mgまでの高用量期からなる。主要評価項目は安全性と有効性であり、有効性評価指標として、認知機能検査Severe Impairment Battery日本語版(SIB-J)および行動・心理症状を測定するNeuropsychiatric Inventory(NPI)スコアを設定した。加えて、副次評価項目および参考評価項目として種々のバイオマーカーを計測する。 【結果】 本治験は2020年6月に被験者登録を開始し、2021年3月に登録を終了した。2022年の治験終了を予定している。【考察】iPS創薬のプロセスで得られた知見を用いて、効果の予想される対象に絞って被験者を集積(enrichment)することが、本治験デザインの特徴である。【倫理的配慮】本研究はGCPおよびヘルシンキ宣言に則り、各実施施設の倫理審査委員会の承認を受けて実施されている。