【目的】がんゲノム医療において治療へ至る可能性を広げるため広島大学病院では、臨床試験情報のデータベース:Hirodai-DB(情報源:がんゲノム検査実施機関、がんゲノム情報管理センター、公共データベース(DB)、臨床医、臨床試験調整事務局)を構築した。Hirodai-DBを解析し、より良い臨床試験の情報収集を行うための問題点を明らかにする。【方法】2019年12月から2021年6月までのがんゲノム医療の実施件数ならびにHirodai-DBに登録した臨床試験のうち標的分子に基づいた臨床試験を解析対象とした。解析内容はHirodai-DBへの全登録件数、解析対象件数、標的分子の種類とがん種と各々の件数および臨床試験調整事務局への問合せ件数と確認内容とした。【結果・考察】がんゲノム医療の実施件数は352件であった。Hirodai-DBへの全登録件数286件の臨床試験のうち解析対象は123件であった。それらのうち標的分子は、EGFR 26件、FGF/FGFR 15件、ホルモンレセプター関連15件、RAS 12件、HER2 10件、BRCA 10件、TMB 5件、MET 5件の順に多かった。がん種は、非小細胞肺癌28件、固形がん21件、乳癌15件、大腸癌9件の順に多かった。問合せ件数は56件であり、その確認内容は、適格基準の詳細16件、募集状況15件、遺伝子変異の詳細12件、募集がん種の詳細8件、同一臨床試験での複数公共DB掲載内容の齟齬3件、試験薬の作用機序1件、治験責任医師情報1件であった。また、調整事務局から機密情報のため臨床試験実施施設に直接問合せを依頼された経験もした。募集がん種詳細8件のうち6件は固形がんに関する問合せであり、がん種が制限されていることを経験した。EGFRを標的とした非小細胞肺癌の臨床試験が最も多かった。臨床試験情報収集の問題点として、公共DBでは臨床試験の詳細な情報が記載されていないことが多く、開示できない詳細情報の存在やがんゲノム医療の実施件数に比べて問合せ件数が約16%と少ないことが挙げられる。本調査において問合せにより詳細情報を蓄積し精度の高いDBとする重要性が示唆された。しかし、Hirodai-DBは単施設によるものであり、がんゲノム医療を推進するためには臨床試験の詳細情報が容易に入手可能な体制の構築が必要と考える。【結論】がんゲノム医療実施の都度、問合せによる精度の高いDBへのアップデートが必要だが、単施設では難しく、効率的な臨床試験の詳細情報が容易に入手可能な体制の構築が必要と考える。