病理診断のために供される検体は、それぞれが肉眼的な特徴(マクロ)と顕微鏡的な特徴(ミクロ)を有し、それらから得られる情報量は膨大なものである。病理業務に携わる医師や技師は、それらの情報を分析し、検体処理や診断に必要な情報を抽出しているが、人間が行う業務ゆえに技術に熟練を要し、安定した業務遂行のために多くの労力を費やしている。病理業務はその多くが手作業で行われ、マクロ写真の撮影などを通じて記録を取りながら進められるが、時間的制約や能力の限界によってそれらの情報をフルに活用しているとは言い難い現実がある。情報を可能な限りコンピュータにより処理し、業務を効率化できれば、業務負担の軽減に加え、それらのデータの蓄積と解析によって新たな知見が得られ、より良い医療の提供に繋げられるはずである。
がん研は内閣府のAIホスピタル計画に参画し、病理部門のデジタル化を推し進めている。マクロ写真については、撮影した検体の写真において切り出し位置を正確に記録し、ミクロ画像との対比により病変範囲を推定し業務を支援するAIを開発中である。ミクロ画像については、全症例の約7割にあたるスライドガラスを日々デジタル化し、コンピュータ画面上で病理医が診断を行うことに加え、病変部の組織分類から自動的に病変部領域を推定するAIの開発により、病理医負担軽減を目指している。さらに、これらの情報を活用して予後を予測するAIなど研究分野においても新たな取り組みを進めている。
既存の病理学にとらわれない、次世代の病理を担うシステムを構築すべく、産学連携を活用し、多くの施設で取り入れられるような汎用性の高いものづくりを目指す、がん研の取り組みを紹介する。