バイオマーカーとは生体情報を反映する指標であるが、医薬品開発からみると有効性や安全性の指標として使用されることが多い。臨床現場においては、予後予測や治療モニタリングの方法として幅広く用いられているが、医薬品開発で用いられるバイオマーカーとは異なる。バイオマーカーは探索的臨床試験から検証的臨床試験に移行する段階では開発の意思決定に有用であるが、それぞれ開発の相において目的が異なる。非臨床試験であればヒトでの想定された薬理作用の確認、懸念される毒性の評価、疾患に合致した評価項目となり得るかなどが挙げられる。MOA (mechanism of action) 試験では、標的組織への薬剤曝露、標的分子への結合などが血中薬物濃度と共に確認され、POC (proof of concept) 試験では評価項目との関連性の評価が期待される。検証的臨床試験では、サロゲートエンドポイントとして、効率的な臨床試験デザイン、疾患特異的な評価、適切な患者集団の特定などが求められる。一方、バイオマーカーを開発する場合には、「どうしたらバイオマーカーとして認められるか」というバリデーションの問題がある。バリデーションとは、製造工程や方法の妥当性を科学的に検証する一連の業務のことをいい、臨床試験においては測定方法の確立としてのバリデーションと臨床試験の評価方法としてのバリデーションと二つの考え方がある。後者では目的に合致したバイオマーカーであること(fit-for-purpose)が重要となる。臨床試験を行う立場から見た医薬品開発におけるバイオマーカーについての考えを述べたい。