がんを患ったことがわかって、3年半が経ちました。自分ががんになるとは全く予測できませんでしたし、それによって、生活が変わってしまうことも、想像していませんでした。手術も放射線治療もできないと告げられ、この先の人生、ずっとがんと付き合っていかなければならないことを受け入れられないまま、標的分子薬を服用したファーストラインが終了。そこで、ぶつかった大きな壁は、抗がん剤治療のみという状況の中で、標準治療のセカンドラインにするか、治験に参加するかという選択でした。ここで自分に治療法の選択が突きつけられるとは思ってもみませんでした。
そもそも、それまでの私にとって、治験は最後の砦というイメージでした。私ががんとわかる2~3年前のこと、40歳という若さで、幼い子供5人を残し、あの世へ旅立った義理の妹が治験に参加していたのです。体力を奪われ、日に日に衰弱してゆくことを話に聞き、「治験=辛いもの」と記憶していた私は、数年後、主治医からその言葉を聞き、驚きを隠せませんでした。
主治医やCRCさんからのインフォームド・コンセントでは、主治医との信頼関係があっても、突然襲いかかる膨大な情報量や治験特有の見えにくい基準・ルールに戸惑いを感じ、参加の判断がすぐにできませんでした。CRCさんからの丁寧な説明や、がん友達の経験談によって、徐々に治験の世界が見えてきて、治験に参加できることはとても貴重な機会であることがわかってきました。本人の体調や意思によって治験をいつでも止めることができることや補償の体制が備わっていることに安心感を得られましたが、それと同時に、自分の身体が適応できるのか、万が一のことがあるかもしれないという恐怖も感じ、とても複雑な心境になりました。結果的に、とにかく子どものために生きなければならないという気持ちが勝り、勢いでスタートした面もありました。
がんという病気が分かって、死を意識せざるを得ない不安を抱えながら、治療をしていく中で、治験参加を選択することは本当に難しいことです。健康な頃のように体力や判断力が十分ではありません。一つ一つ考え、決断していくには、時間と意志決定となる判断材料が必要で、それには医療者とのコミュニケーションが重要なカギになると感じました。
本シンポジウムでは一個人が感じた「治験に参加して感じたこと、望むこと」について、お話させていただきたいと思います。