小児医療現場で、チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)として、子ども達と家族に心理社会的支援を行いながら、子ども達への服薬支援も長年に渡って経験してきた。水薬、粉薬、錠剤、カプセル剤などと剤形の違いはあっても、その薬の味や匂い、舌触り、色、大きさなどから、それぞれの剤形が抱える問題がある。水薬を嫌がって口から出したり、粉薬を水やシロップで溶かして飲ませる必要のある乳児。粉薬のままではまだ飲めずに水で溶かす必要のある幼児もいれば、口を開けて粉薬を入れれば飲める幼児もいる。錠剤はまだ飲めず、粉薬の苦みを我慢して飲んだり、服用ゼリーを使ったりしながらも頑張って飲む幼児や学童。錠剤がまだ上手く飲めず、半分に割ったり、砕いたりして飲む小中学生。大きすぎる錠剤やカプセル剤を飲むにはまだ困難を抱える小中学生など様々である。子どもの発達段階や服用状況において、何が問題で服用が困難になっているのか、どうしたら服用しやすいのか、その都度子どもに確認したり、その子どもの反応を観察したりしているとその共通課題も見えてくる。 「子どもの服用に望ましい小児用剤形はどのようなものなのか?」という問いに答え、今後のより良い小児製剤の開発や改善に繋げるためには、小児医療現場で子どもの服薬を経験している医療者が、小児製剤の改善点や要望を伝えていく必要性を感じている。また、実際に服薬を経験している子ども達からも、子どもの視点から見た問題点や意見を集め、それらを製薬に反映させていくことであると考える。子ども達の服薬の困難感を減らすことは、治療効果やアドヒアランスの改善につながり、さらには、子どもに服薬させる医療者や家族にとっても、子どもに服用させるための時間と労力を大いに減らすことに貢献するであろう。 最近の子ども達は、その子なりの考えや意見を持てるようになっているが、薬剤に対するその思いを伝える場や機会がなかったのも事実である。そのため、小児製剤に関する小児アドバイザリーボードとして、服薬経験のある子ども達に話に参加してもらい、服薬に対する様々な経験談を共有したり、薬剤に関する思いや希望などを直接聞いたりする機会を作ることを始めた。医療現場・患児家族・製薬企業の三者が上手く繋がり、お互いに意見を出し合いながら、子どもの視点に立った小児製剤の開発や改善に活かせるようになることに期待したい。